検察官は証拠不十分であるときに不起訴とするだけでなく、被疑者を有罪とする証拠が十分にあっても事件の重大性、事件の原因や状況、事件後の状況など、あらゆる事情を考慮して起訴猶予とすることが可能である。この起訴猶予裁量については、検察内部の規律はあっても、それ以外の法的制約はないに近い(公訴権濫用論というものは議論されているが)。検察官の起訴裁量が広範にある結果、日本の実務上は無罪率が極めて低くなっている。それは自白事件はもとより、否認事件においてすらである。このことは検察官が有罪を確信している事件のみを起訴していることを推測させる。

つづく