刑法上の不法侵入ではあっても、丼を盗んだのとは異なり、スープの「味を盗んだ」としても、被害を受けたラーメン店から情報がなくなってはいないので、そのまま美味しいラーメンは作り続けられる。にもかかわらずライバル店に情報が「複製」された結果、同じように美味しいラーメン店ができ、被害店の客がそちらに流れ、収益が減少するかもしれない。しかし、その額を被害店側で確定して証明することは困難であろう。そこで5条では、加害者側の利益をもって被害者の損害と推定するとともに、その営業秘密を切り売りする際の対価をもって損害とすることも可能として、損害額の確定的証明の困難さを緩和している。

つづく