判例研究会
2017年12月2日(土)
於 西村あさひ法律事務所

13:30-14:20
紋谷崇俊(西村あさひ法律事務所)
Impression Products, Inc. v. Lexmark Int'l, Inc., 137 S. Ct. 1523 (2017)
特許消尽(特許権者が適法に特許製品を流通に置いた場合、その製品に対する権利は目的を達成したものとして消尽し、最早その後の当該製品の使用や販売等は侵害にならないとする理論)の適用について争いがあったところ、
(1)再販売禁止等の合意に反して転売された特許製品について消尽を認めると共に、
(2)国外で販売され国内に輸入された製品についても国際消尽を認め、
いずれも特許権者による特許権の行使を否定した事例。 

14:25-15:15
佐藤剛史(アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
Water Splash, Inc. v. Menon, 137 S.Ct. 1504(2017)
テキサス州裁判所に提訴した原告がカナダ在住の被告に対してした直接郵便送達が許容されるか否かが問題となった事案において、直接郵便送達の方法は、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約(ハーグ送達条約)10条(a)号に含まれ、同条約上禁じられていないと解すべきであるから、同条約10条(a)号につき名あて国が拒否の宣言をしておらず、かつ提訴地法が直接郵便送達を適法としている限り、直接郵便送達の方法は許容されるとした事例。

15:20-16:10
家本真実(摂南大学)
Matal v. Tam, 137 S. Ct. 1744 (2017)
アジア系米国人で構成される音楽グループが、アジア系に対する蔑称として使用される“slant”を自らのグループ名に採用して“THE SLANTS”と名乗り、“THE SLANTS”という言葉を商標として登録する出願を特許商標庁に対しておこなったところ、生死を問わず人物を中傷するおそれのある標章の登録を認めないとするランハム法(連邦商標法)の規定(Lanham Act, 15 U.S.C.A. § 1052(a))に基づいて登録を拒絶された。合衆国最高裁は、合衆国憲法第1修正が名誉を毀損する言論を禁じていないことなどを理由に、当該規定が合衆国憲法第1修正に反して違憲であると判断した。

16:15-17:05
吉川智志(慶應義塾大学大学院)
Bethune-Hill v. Virginia State Bd. of Elections, 137 S. Ct. 788 (2017)
2010年の国勢調査を受けて再区割りされたヴァージニア州議会下院の12の少数者多数選挙区が、第14修正平等保護条項に反する人種的ゲリマンダーか否かが争われた事例。連邦地裁は、選挙区と伝統的区割り原則との「実際の衝突(actual conflict)」がない場合、区割りに際して人種が支配的要素であったとは認定されないとして、かかる衝突が現に生じていた第75選挙区についてのみ人種の支配性を認定し、厳格審査を適用した(結論、合憲)。連邦最高裁は、(1)人種の支配性の認定にあたり「実際の衝突」は必須ではないとして、11の選挙区に関する地裁の判断を破棄し差し戻す一方、(2)第75選挙区を合憲とする地裁の判断についてはこれを是認した。