2016年12月17日(土)判例研究会
東京大学山上会館

13:00−13:50
 CRST Van Expedited, Inc. v. Equal Employment Opportunity Commission, 136 S.Ct. 1642 (2016)
雇用機会均等委員会が、CRSTというトラック会社で差別行為があったと主張する従業員らのために、当該会社をクラス訴訟(Title VII of the Civil Rights Act of 1964, 42 U.S.C.S. § 2000e et seq.)として訴えたところ、合衆国地方裁判所は請求をすべて棄却し、当該委員会に対して勝訴した被告会社の弁護士費用を補償するよう命じた。これに対し、当該委員会は、弁護士費用の補償について上訴してその範囲を争ったが、その主張は、クラスメンバーのうち一部の従業員についての被告会社の勝訴内容は、当該委員会が提訴前に定められていた調査及び和解の試みを十分にしていなかったことを理由とするものであり、本案内容についての理由によるものではなかったことから、それらについては弁護士費用の補償が認められる「prevailing party(勝訴当事者)」には当たらないというものであった。合衆国最高裁は、勝訴した被告雇用者側の弁護士費用を相手方に補償させるか否かにつき裁判所が裁量で判断する際の「勝訴」の要件として、「本案の判断で勝訴すること(a favorable ruling on the merits)」までが要件とされているものではないと全員一致で判断した。
田村陽子(筑波大学)

14:00−14:50
Fisher v. University of Texas, 136 S. Ct. 2198 (2016) 
 大学の入学者選抜における人種の使用は、目的審査では大学の判断を敬譲するが、手段審査では敬譲しない厳格審査の下で、合憲とされた事例。
茂木洋平(桐蔭横浜大学)

15:00−15:50
Halo Electronics, Inc. v. Pulse Electronics, Inc., 136 S.Ct. 1923 (2016)
米国特許法284条は、裁判所が損害賠償を3倍まで増額できる、との懲罰賠償を規定しているが、増額のための具体的な要件は規定していない。この点について、2007年の連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は、Seagate事件において、客観的無謀(objective recklessness)と主観的認識という2つの要件の充足を求めるという、二段階テストを採用していた。これに対して、本判決では、かかる二段階テストが厳格に過ぎるとして、これを採用しないことを明言しつつ、典型的な侵害を超えた重大な不正の事案(egregious cases of misconduct beyond typical infringement)において、損害賠償額を増額する裁量を裁判所が有する、と判断した。本判決によって、特許侵害訴訟において懲罰賠償を認めるか否かの判断における裁判所の裁量が拡大したといえるが、懲罰賠償を命じる判決が増加するか否かは、本判決において示された基準がどのように適用されるかによると思われる。
山内真之(アンダーソン・毛利・友常法律事務所)

16:00−16:50
Whole Woman's Health v. Hellerstedt, 579 U.S. _, 136 S. Ct. 2292 (2016)
 2013年に制定されたテキサス州法の2つの規定である「患者受け入れ特権の要件(the admitting-privileges requirement)」および「外科施設の要件(the surgical-center requirement)」を、中絶のアクセスに対する過度の負担となるとして合衆国憲法に違反 するとした事例。
小竹聡(拓殖大学)