「アメリカ法」執筆要領(2019改訂版)
2004年9月11日
日米法学会アメリカ法編集委員会

 表現方法に関する考え方の多様性は承認しつつも,雑誌として体裁を統一する必要があるため,「アメリカ法」原稿執筆にあたっては,この要領に沿っていただきますようお願いいたします。仮名遣い,送り仮名,地名,人名などの表記法,原語の挿入,文献,判例,法令の引用方式,その他体裁に関する点の最終的統一は,編集責任者にご一任いただきたく存じます。

《原稿提出方法》
 雑誌「アメリカ法」の原稿は,(1)ファイルを収めたフロッピー・ディスクもしくはCDにプリントアウトを添えて,または(2)電子メイルの添付ファイルとして,のいずれかの方法で提出してください。ファイルは,テキスト・ファイル,MS-Word,または一太郎のいずれかでお願いします。

《ご執筆にあたりとくにご注意いただきたい点》
1 文献,判例,法令などの引用は正確にお願い致します。
2 それらの資料の引用にあたっては,当該引用箇所のペイジ数と,特に発行年(発表,刊行年)の指示をお忘れなきよう,お願い致します。
3 欧文の単行本や雑誌論文の著者名,編者名は,タイトル・ペイジの記載通り(典型的には,ファースト・ネイム,ミドル・イニシャル,ラスト・ネイム,Jr.等の接尾名の組み合わせ)にお示しください(後掲XII参照)。
4 判例の当事者名,州のCode名,論文掲載誌名などの略記法について不明の場合には,完全な語をお書きください。
5 注は原稿の最後に,本文とは別にまとめてお付けください。

《執筆要領》
I 判型
 横書き。

II 篇別の立て方
 I, II, III →1, 2, 3→(1), (2)・・・の順とし,それぞれになるべく標題をつけ,読みやすくする。「章」「節」などは用いない。

III 文体
 「・・・である」を使用し,「・・・であります」は用いない。

IV 用語,用字法
1 新字体(ただし,常用漢字に制限されない。)

2 仮名遣い
(1) 新仮名遣い
(2) 送り仮名については,法学用語上の慣用を除き,市販の用字辞典ないし国語辞典(おおむね昭和48年6月18日内閣告示「送り仮名の付け方」に準拠している。)を参照する。

3 読みやすくするためになるべく「かな」を多くする(例,所謂→いわゆる,我々→われわれ,此の→この,及び→および,即ち→すなわち)。

4 数字
(1) アラビア数字を原則とする。
○ 20世紀  × 二十世紀,二○世紀
○ 第1に  × 第一に
○ 1人  × 一人
(2) 不確定数は漢字を使用する。
十数人,数百人,千人の人出
(3) 熟語ないし固有名詞的なものは漢字を使用する。
一元的,十人十色,三十三間堂

5 単位
カタカナを用いる(メートル,キログラム,パーセント・・・)。

V 符号
1 併記
○ 政治的,社会的  × 政治的・社会的
○ マルクス,エンゲルス,レーニン  ×マルクス・エンゲルス・レーニン

2 括弧
 通常は( )を用いる。( )内が文章のときは,ムム。(ムム。)という形にし,そうでないときはムム(ムム)。とする。
 原文にないものを補う場合には,[ ]を用いる。

3 強意(英文イタリックに当る)
 傍点,イタリック,網かけを用いず,アンダーラインを原則とする。場合により,《 》を用いてもよい。

VI 術語
1 「契約」,「不法行為」というような一般的な言葉を除き,原則として原語で記し,かつ,初出の箇所で訳語を括弧に入れて示す。ただし,アメリカ法独自の言葉で邦訳を示すことにあまり意味が認められないときは,訳語を示さなくともよい。

2 法令は原語で記すのを原則とし,訳語によるときも,憲法その他きわめて有名な法律を除き,最初の箇所で原語を付記する。
 条文を訳語で示すときは,「第××編」のときに限り「第」をつけ,他は単に「××節」,「××条」とする。

3 合衆国憲法については,U.S. CONST. art. I, §9, cl. 2は,合衆国憲法第1編9節2項とし.U.S. CONST. amend. XIV, §2は,合衆国憲法第14修正2節とする。

4 裁判所等については,次のように記す。合衆国最高裁判所,第2巡回区合衆国控訴裁判所,ニュー・ヨーク州南部地区合衆国地方裁判所,イリノイ州最高裁判所,合衆国議会,ニュー・ヨーク州議会

VII 略語
 他の専門の人でもわかるもの以外は,最初に出て来る所で,断り書きをする。この場合にも,通常用いられている略語を用いることにし,我流の略語は避ける。

VIII 人名,地名の表記
1 日本人名については,本文と注の双方において,初出の箇所で名まで入れる。

2 外国人名については,国王,大統領,合衆国最高裁判所裁判官,その他の著名人で,わが国でよく知られた名のときは,カタカナのみで記す。
 それ以外の者は,原語のみで示すのを原則とし,必要に応じて初出の所で括弧内にカタカナによる発音を示すか,あるいは,逆にカタカナ表記をして,初出の箇所で原語を括弧に入れて示してもよい。
 名は原則として,著書論文等で自ら用いているフル・ネイム(パスポートや出生証明書に記載のフル・ネイムよりは簡略でありつつ,日常に友人間などで用いる通称よりは正式で,典型的には,ファースト・ネイム,ミドル・イニシャル,ラスト・ネイム,Jr.等の接尾名の組み合わせ)で示す。
 裁判官名を表記する場合,「××判事」ではなく「××裁判官」を用いる。

3 判例の中の名など,個性が問題でないときは,姓のみを原語で示す。ただし,姓のみでは区別不能なときは,名も原語で示す。

4 国の名,アメリカの州の名,大都市の名はカタカナ表記。それ以外のものは原語で記し,必要があれば括弧内にカタカナで発音を示す。

IX 外国語のカタカナ表記法
1 なるべく原語の発音通りに表記する。短音,長音,二重母音は区別する(たとえば,オ,オー,オウ)。

2 ただし,完全に日本語化しているものについては,慣用に従う。

X 引用,挿入
1 引用文は「 」で示し,出典を明記する。挿入はーーを用いる場合もある(ーー挿入句ーー)。

2 文献等を引用する場合,著者などの敬称は省略する。

XI 注の入れ方
1 脚注(番号は肩つき片括弧1),2)・・・)にまとめ,番号は論文ごとに通し番号とする。

2 原注と訳注との区別が必要なときは,符号をかえる。訳注はa), b), c)とする。

3 脚注にかえて本文中で引用を示す場合には,原則として( )に入れる。

XII 文献(単行本,論文)の引用
 文献は,著者,タイトル,頁,発行(発表)年を示すのを原則とする。発行(発表)年は( )に入れて示す。

1 邦語文献の引用例
 邦語文献については,以下の例に沿った形で,わが国の通常の引用法(たとえば,法律編集者懇話会「法律文献等の出典の表示方法」の最新版)に従う。ただし,出版社名は,版による内容の差異を指摘するなど論述上の必要がある場合を除き,示さない。
(1) 単行本
末延三次『英米法の研究(上)』100頁(1961)。
田中英夫『実定法学入門』68頁(第3版,1974)。
 3名以上の著者編者がいる場合,筆頭著者編者のみを示して,××(他)とする。また、(編)(訳)といった表記も( )に入れる。 
藤倉皓一郎(他)(編)『英米判例百選』(第3版,1996)。
(2) 論文
長島安治「弁護士活動の共同化」ジュリスト318号55頁(1965)。
松平光央「ブラックストン考」『現代イギリス法(内田古稀記念)』457頁(1979)。
 文献名は,わが国の慣用にしたがって略記してよい。その際,日米法学会(編)『英米法研究文献目録 1976-1995』(1998)や,法律編集者懇話会「法律文献等の出典の表示方法」の最新版などを参照できる。
(3) すでに引用された邦語文献を再度引用するときは,
長島,前掲(注39),58頁。
のように示してよい。

2 外国文献の場合
 原則として,THE BLUEBOOK: A UNIFORM SYSTEM OF CITATIONの最新版による。ただし,DARBY DICKERSON, ALWD CITATION MANUAL: A PROFESSIONAL SYSTEM OF CITATIONおよびTHE UNIVERSITY OF CHICAGO MANUAL OF LEGAL CITATIONも省略形を確認するときなどに参考となる。
(1) 単行本の場合,BENJAMIN N. CARDOZO,THE GROWTH OF THE LAW 10 (1924)のように,著者名はタイトル・ペイジの記載通り,タイトルはサブ・タイトルの省略も可能とし,字体はすべて大文字で表記するが,大文字のポイントの大小(ラージ・キャピタルおよびスモール・キャピタル)によって大文字小文字を区別する。版次が異なるときは,(2d ed. 1973)のように示す。
(2) 雑誌論文は,Louis Loss, The Conflict of Laws and Blue Sky Laws, 71 HARV. L. REV. 209 (1957)のように,著者名はタイトル・ページの記載通りに通常のアルファベットの字体(ローマン体)で付し,論文タイトルはイタリックでサブ・タイトルまで表記し,掲載誌名を大文字(ただし,ポイントの大小(ラージ・キャピタルおよびスモール・キャピタル)によって大文字小文字を区別する。)で略記したうえで,巻数を誌名の前に,頁数を後に示す。(誌名の略記法については,[1974-2]アメリカ法425頁以下,[1982-1]アメリカ法139頁以下,および上掲THE BLUEBOOKその他のマニュアルを参照。)
 雑誌で,暦年をもって巻数にしているものについては,その年数を1938 WIS. L. REV.というようにする。
(3) 雑誌論文のある箇所を引用するときは,78 HARV. L. REV. 119, 128 (1964)というように,論文の最初のペイジと当該引用箇所のペイジとを併記する。
(4) 論文集など単行本の中の論文を引用する場合には,Peter H. Schuck, Mapping the Debate on Jury Reform, in VERDICT: ASSESSING THE CIVIL JURY SYSTEM (Robert E. Litan ed., 1993)のように,本の編者名を発行年の( )の中に記す。
(5) 雑誌論文で,学生の書いたNote, Commentなどは,それぞれの雑誌で用いられている見出しに合わせて,著者が明示されている場合はShoshana L. Gillers, Note, A Labor Theory of Legal Parenthood, 110 YALE L.J. 691 (2001)のように,また著者が匿名である場合はNote, Last Hired, First Fired Layoffs and Title VII, 88 HARV. L. REV. 1544 (1975)のように記す。
(6) すでに引用された文献を再度引用するときは,CARDOZO, supra note 1, at 22.あるいは,Loss, supra note 2, at 212.のように示してもよい。著者名がないときは,タイトルを出す。The Supreme Court, 1979 Term, supra note 5, at 80.
(7) 再度の引用をする場合に,supraを用いても煩雑にすぎるときは,初出の箇所で完全な引用をしたあと,[以下,ーー]または[hereinafter ーー]のように,ーーの部分に短縮形を示し,以後は――, supra note 7, というように記してもよい。

XIII 判例の引用
1 わが国の判例の引用方法,判例集の略記法については,わが国の例(たとえば,法律編集者懇話会「法律文献等の出典の表示方法」の最新版)による。

2 外国の判例の引用は,原則として, THE BLUEBOOK(前掲XII2)の最新版による。
(1) 判例は,Palmer v. City of Euclid, 402 U.S. 544 (1971)という形で引用する。
(2) 判例を本文で引用する場合には,当事者名のうちCo., Corp., Inc., Ltd., &, No.のほかは略記しない。注の場合にはBoard→Bd., University→Univ.のように略記する。略語の一覧表はTHE BLUEBOOKなどのマニュアルにあるので,それに準拠してよいが,「アメリカ法」読者であっても一見して元の言葉が推測できないおそれのある略語は,とくに当事者名の冒頭の語については,用いることを避ける。
(3) 合衆国最高裁判所の判例については,U.S.を引用する。ただし,「判例紹介」欄の表題部,および最近の判例の引用の場合には,S. Ct.を併記する。最近の判例でU.S.の巻頁が不明のときは,初出のところで,--- U.S. ---, 123 S. Ct. 1029のように表示する。
(4) 合衆国の下級審判例については,356 F.2d 761 (4th Cir. 1966)あるいは117 F. Supp. 241 (E.D.Tenn. 1954)のように,かならず括弧の中に巡回区,裁判区を明示する。
(5) 州裁判所の判例は,National Reporter Systemを引用し,70 So.2d 367 (Fla. 1954)のように,括弧内に州名を略号で入れる。ただし,媒体中立的な public domain formatを採用している州の裁判所については,その引用形をNational Reporter Systemの引用の前に出して併記して,それによって不要となる括弧内の州名および判決年の記載を省略することができる。たとえば,State v. White, 2002 ME 122,¶10, 804 A.2d 1146, 1149.
(6) 古い判例集の引用方法は,リポータの名を冠した判例集名を後の括弧内に出し,Green v. Biddle, 21 U.S. (8 Wheat.) 1 (1823)のようにする。

XIV 法令の引用
1 わが国の法令の引用方法,略記法については,わが国の例による(XIII1参照)。

2 外国の法令の引用は,原則としてTHE BLUEBOOKの最新版による。
(1) 現行法は,原則としてCodeで引用する。National Environmental Policy Act of 1969, §102, 42 U.S.C. 4332 (2000).
(2) 立法,改正といった歴史的事実を示す場合,その他Codeを引用することが不適切なときは,Session Lawで引用する。この場合に,現行のCodeの箇所を( )で示してもよい。National Environmental Policy Act of 1969, Pub.L. No. 91-190, §102, 83 Stat. 852, 853 (1970) (codified as amended at 42 U.S.C. §4332 (2000)).
(3) Code名は,THE BLUEBOOKの略記法により,大文字(ただし,ポイントの大小(ラージ・キャピタルおよびスモール・キャピタル)によって大文字小文字を区別する。)で記し,原則として発刊年(本の背,扉または著作権記号に付記の年数)を括弧に入れて示す。ただし,連邦のCodeであるU.S.C.については刊行年を省略することができる。
 Unofficial Codeで引用するときは,原則として出版社あるいは編纂者名を( )の中に年号と併記する。
42 U.S.C.A. §300c-11 (West 2002).
N.Y. JUD. LAW §121 (McKinney 2002).
(4) 裁判所規則,統一法,リステイトメントなどの表記法。
 連邦裁判所規則については年号を記載しない。
FED. R. CIV. P. 12.
FED. R. EVID. 410.
U.C.C. §2-205 (1977).
MODEL RULES OF PROF'L CONDUCT R. 5.7 (1983).
RESTATEMENT(THIRDOF UNFAIR COMPETITION §20 (1995).
RESTATEMENT(THIRDOF THE LAW GOVERNING LAWYERS §70 cmt. f, illus. 2 (2000).

XV LEXIS, Westlawの引用法
 紙媒体ではなく,LEXIS, Westlawといった信頼度の高いオンライン・デイタベイスを引用する必要がある場合には,たとえば判例であれば次のように表記する。
Sank v. City University of New York, No. 94 Civ. 0253 (RWS), 2003 U.S. Dist. LEXIS 5471, at *15 (S.D.N.Y. April 4, 2003).
Sank v. City University of New York, No. 94 Civ. 0253(RWS), 2003 WL 1807142, at *4 (S.D.N.Y. April 7, 2003).
 
XVI インターネット・サイトの引用法
 インターネット・サイトは,情報の追加や削除,およびサイトの移動が頻繁に行われるので,他の媒体による引用が可能である限り,引用は避ける。引用する必要のある場合には,サイトのURLとともに,そこに情報があることを最後に確認した日付を付記する。たとえば,http://www.legalbluebook.com/ (2003年4月16日最終検索)。