比較法国際アカデミーについて(2023年)
 比較法国際アカデミー(International Congress of Comparative Law, Academie internationale de droit compareは,世界各国の代表的な比較法学者によって構成される「諸・法体系の比較研究」(定款第2条)のための国際学術会議団体であり,この分野で最大規模の「比較法国際会議」(International Congress of Comparative Law, Congres international de droit compareを4年ごとに開催している。
 現在,会長は,ギウディッタ・コルデオ=モス(Giuditta Cordeo-Moss)(オスロ大学教授),事務局長はゲリー・ベル(Gary Bell)(シンガポール国立大学准教授)の諸氏である。本部事務局はパリにある。
 このアカデミーが創設されたのは,1924年,オランダのハーグにおいてであり,同地の常設国際司法裁判所や国際法アカデミーの設立と同様に,第一次大戦後の平和を法によって確立しようとの目的からであった。その推進者は,ハンガリーのローマ法学者 Elemer Balogh(初代事務局長)であり,法の歴史的・同時代的比較が諸国民の緊密な結合の礎となるべきことを確信していたのである。
 歴代会長として,Andre Weiss(パリ大学),Antonio S. de Bustamante(ハバナ大学,国際司法裁判所),Roscoe Pound(ハーヴァード大学),Jean Escarra(パリ大学),Louis Milliot(パリ大学),Joseph Hamel(パリ大学),Baron Louis Fredericq(ガン大学,ブリュセル大学),C.J. Hamson(ケンブリッジ大学),Imre Szabo(ブダペスト国家法学院),John Hazard(コロンビア大学),Paul-Andre Crepeau(マギル大学),Konstantinos Kerameus(アテネ大学),George A. Bermann(コロンビア大学),カタリナ・ブレ=ヴルキ(Katharina Boele-Woelki)(ユトレヒト大学教授),歴代事務局長として,Elemer Balogh, Robert W. Lee, Felipe de Sola Caヒizares, Gabriel Marty, Roland Drago, Jurgen Basedow, Diego P. Fernandez Arroyoがいる。
 アカデミーには,国別の国内委員会が77か国に組織されており,これらの協力のもとに全体の組織・運営がなされる。
 最大の事業は,4年に一度の「比較法国際会議」の開催であり,実定法諸分野に法史学・法哲学・比較法・文献情報学を加えた20の分野について,分野により複数のテーマが立てられるので,約30にのぼる分科会ごとに,各国からのナショナル・レポートをもとにしてジェネラル・レポーターが報告を行い,出席しているナショナル・レポーターを交えた討議を行う。出席者は,現在では毎回,国内外を含めて数百名規模となる。
 第1回・第2回はハーグ(1932年,1937年),戦争による中断ののち,ロンドン(1950),パリ(1954),ブリュセル(1958),ハンブルグ(1962),ウプサラ(1966),ぺスカラ(1970),テヘラン(1974),ブダペスト(1978),カラカス(1982),シドニー(1986),モントリオール(1990),アテネ(1994),ブリストル(1998),ブリズベン(2002),ユトレヒト(2006),ワシントンDC(2010),ウィーン(2014),福岡(2018)を経て,2022年にはパラグアイ・アスンシオンで開催された。
  更に,中間の時期の小テーマ会議も始まり,メキシコ(2008),台北(2012),モンテヴィデオ(2016)を経て,2021年には南アフリカ共和国・プレトリアで開催された。
 これらの成果は,或いはアカデミーから(特にジェネラル・レポートに関して),或いは国内委員会から(ナショナル・レポート),或いは個別的に(テーマ別に),刊行される。
 比較法国際アカデミー自体は研究推進団体であるが,1961年には,事務局長デ=ソラ=カニサレス(スペインの比較法学者)の肝煎りにより教育機関として「比較法国際大学」(Faculte internationale de droit compareがストラスブールに設立され,アカデミーがその組織運営に協力している。ほかに近年,優れた比較法の研究書に対して「アカデミー賞」も授与されるようになった。
 日本では,国内委員会の事務局は東大法学部内に置かれている。