2023年7月28日 英米法試験解説

I. 弁護士非行の多くは依頼者を裏切るタイプのものであるが,相手方や裁判所や司法制度の利益を損ねるタイプの非行もあり,Rule 11は後者のタイプで訴訟手続内での非行について裁判所が課す制裁である。本件に関しては,杜撰な判例検索によりありもしない判例を引用した書面を提出し,擁護したことで,相手方や裁判所,さらにはありもしない判決の執筆者とされた裁判官に対する非行として制裁が課された。

II. 連合王国では硬性憲法がなく,条約もそのままでは国内裁判所で適用されない。1972年法は,EU法を包括的に国内法化し,かつ通常の国内法に優越するものとしたが,それ自体は通常の国内法であった。そのためEU離脱に際して1972年法は通常の国会立法で廃止されるが, しかし1972年法により,個別の国内立法なしにEU法だけに基づいて成立した権利関係が一瞬のうちに消滅するというのは妥当ではないため,2018年法は別途の国内立法での手当がなされるまで,EU加盟中のEU法を当面は通常の国内法として有効とした。

III. 直接主義,口頭主義,集中審理。誰を証人喚問するかは事前に決められるが,法廷での質問と応答には即興の要素。こまごまとした証拠法上の問題についてすべて異議を申し立てるのは手続を阻害するので,無用な異議は放棄してもいい。しかし陪審に聴かせるべきではない証言は阻止する必要。遅きに失する異議は陪審に聴かせてしまって無意味でもあるし,異議の放棄ともみなされる。異議をしないと上訴でも争えない。異議に対して1件1件吟味するのも集中審理を阻害する。

IV. Bill of Rightsは連邦政府に対して主張できる具体的権利のカタログ。14修正のdue process clauseは州政府に主張できる権利の一般条項で,Bill of Rightsをincorporateすることで州に対して主張できる具体的権利となる。第1修正の表現の自由,信教の自由,第2修正の武器をもつ権利,第4-6修正の被疑者被告人の権利など。例外は,第5修正の中の大陪審の権利と第7修正の民事陪審の権利。