2020年度Sセメスター 英米法総論
第1問 配点1/6
(1) 法廷の証人が自ら見聞したことを証言するのではなく,第三者が見聞したと聞いた内容を証言すること。法廷外で作成された書面が法廷に提出される場合も含む。証人や書面を法廷で反対尋問にさらしても当該内容の真偽を確認できない。
(2) 統一州法委員会などの団体が各州での採択のために提案する州法案。法律の条文の形で提案される。各州で採択されるかは各州の議会次第であり,部分的に修正されて採択されることもある。採択されてもそれは各州の州法であり,統一州法であることから他州での解釈や州法案に付属のコメントも参照されるが,最終的には最終的解釈権限はそれぞれの最上級裁判所にある。
第2問 配点1/3
(1) 州法上の犯罪についての専属管轄権は当該州の裁判所にあり,捜査などの手続法について合衆国憲法上の争点があっても,まずは州裁判所が判断する。州の最上級裁判所から当該合衆国憲法上の争点について合衆国最高裁判所に裁量上訴する道はあるが,それが認められることは稀である。しかし合衆国憲法違反の収監がなされているという理屈で連邦地方裁判所に人身保護令状ことで,連邦裁判所において合衆国憲法上の争点について判断を求めることが可能になっている。
(2) ドレッド・スコット判決では,黒人は合衆国憲法上の市民ではないので,州籍相違管轄権を主張できないとした。合衆国憲法第13修正は合衆国内の奴隷制を廃止したが,第14修正1節では解放奴隷を念頭に合衆国内で生まれたものをすべて合衆国市民とすることでドレッド・スコット判決を否定して,州に対して主張できる人権保障を定めた。
第3問 配点1/2
(1) イングランドでは18世紀中頃から1966年まで判例変更をしないとしてきたが,その後も判例変更には消極的である。ただし判例の区別は用いる。アメリカでは判例変更には積極的であり,特に憲法判例は,憲法修正でなければ議会も変更できないので,最高裁は判例変更をいとわない。反対に法律を解釈する判例は,誤りとしても議会が多数決で対応できるので,裁判所としては先走って判例変更すべきではないとされる。判例法(コモンロー)分野の判例変更にはその中間的な態度が取られる。
(2) イングランドでは1875年に融合されたが,高等法院ではなおコモンロー由来の部とエクイティ由来の部とで分かれている。アメリカでは1848年に融合された。実体法的にはなおエクイティの補充性などの性格が残っている。アメリカでは人種隔離撤廃などで強力な差止命令をエクイティ・パワーとして発し,従わないと裁判所侮辱の制裁がなされる。陪審はコモンローと分類される事件で使われる。