2019年12月21日(土) 判例研究会
於:西村あさひ法律事務所

13:30−14:15
American Legion v. American Humanist Association, 139 S. Ct. 2067 (2019)
第一次世界大戦の戦没兵士を追悼するために建てられたラテン十字架型記念碑の公有地での展示および州による維持管理が合衆国憲法第一修正の国教樹立禁止条項に違反しないとされた事例。
福嶋敏明(神戸学院大学)

14:25−15:10
Merck Sharp & Dohme Corp. v. Albrecht, 139 S.Ct. 1668 (2019)
本件は、処方箋医薬品の副作用により非定型大腿骨骨折を患った患者が、製造物責任法上の警告義務違反に基づき製薬会社に対し提起した訴訟である。連邦食品医薬品及び化粧品法に基づく添付文書の規制と州製造物責任法に基づく警告義務との関係につき、合衆国最高裁はWyeth v. Levine判決(2009年)において、製薬会社による警告を強化するための添付文書の改訂をFDAが拒絶したであろう「明白な証拠(clear evidence)」が無い限り、FDAの規制による州製造物責任法の不可能による専占は認められないと示したが、本判決は、かかる「明白な証拠」の意味及び判断主体(裁判官か陪審か)を合衆国最高裁が初めて示したものである。
秋元奈穂子(台湾国立交通大学)

15:20−16:05
North Carolina Department of Revenue v. Kimberley Rice Kaestner 1992 Family Trust, 139 S. Ct. 2213, 588 U.S. ___ (2019)
州内に信託の受益者が居住していることを理由として州外に存在する信託の未分配の所得に対して課税するノース・キャロライナ州税法の本件への適用が,デュー・プロセス条項に反するとされた事例である。最高裁判所は,州税の合憲性に関するデュー・プロセス条項の適用についてのQuill判決(1992年)の枠組みを所与とした上で,2つの要件のうちの1つである「最低限のつながり」につき,受益者自身と州の関係を問うのではなく,信託財産に属する財産と州との間に最低限のつながりがあるかどうかを判断し,このつながりがないとして,本件課税を違憲であると判断した。州税に関するものではあるが,課税権の限界を比較的厳格に捉えたという点で,興味深い事例である。
渕圭吾(神戸大学)

16:15−17:00
Apple Inc. v. Pepper, 139 S. Ct. 1514 (2019)
Appleは,契約と技術的な手段によって,同社のApp Store以外ではiPhoneユーザーがアプリを入手できないようにしていた。アプリの開発者がApp Storeでアプリを販売するためには,年間99ドルの会費を払い,アプリの小売価格の小数点以下2桁を99にしなければならなかった。そして,小売価格の30%が,手数料としてAppleの取り分となった。2011年に4人のiPhoneユーザーが,AppleはiPhoneアプリ市場を違法に独占しているとして裁判所に訴えた。
 アメリカには,違反行為の対象となった商品役務を違反行為者から直接購入したのでない者は損害賠償を請求できないという判例法理があり,本件ではその法理との関係が問題となった。本報告は,事件の最高裁判決について報告する。
大久保直樹(学習院大学)