日米法学会判例研究会
2018年12月1日(土)
於:西村あさひ法律事務所

13:00 - 14:15
Husted v. A. Philip Randolph Inst., 138 S. Ct. 1833 (2018)
選挙による不投票を理由として有権者登録からの削除手続を開始し、登録有権者からの返信がないこととその後の継続的な不投票の認定後に、有権者登録から削除するオハイオウ州法は、削除理由を転居による場合とし、不投票を理由に削除してはならないと規定する全米有権者登録法とアメリカ有権者支援法に違反しないとされた事例。
東川浩二(金沢大学)

14:25−15:10
Rubin v. Islamic Republic of Iran, 138 S. Ct. 816 (2018)
本件は、イラン国家支援テロの被害者等がイランを相手取り米国国内裁判所に提起した民事訴訟の確定賠償判決を強制執行するために、イラン国有財産である古代の粘土板等の差押えができるか否かが争われた事件である。原告は、(1)国家支援テロに基づき外国を相手取る民事裁判につき(裁判)免除を認めない外国主権免除法第1605条A及び(2)当該裁判判決の強制執行に関する第1610条(g)を根拠として粘土板等の差押えができる旨主張した。これに対し、合衆国最高裁は、第1610条(g)の解釈から、同条は本件強制執行を認める根拠とはならないとする第7巡回区裁判所判決を確定させた。
広見正行(上智大学)

15:20−16:05
Merit Mgmt. Grp., LP v. FTI Consulting, Inc., 138 S. Ct. 883 (2018)
連邦倒産法546条(e)項は、金融機関等のためになされた保証金の支払いや決済については管財人による否認権の行使を認めないという、いわゆる「セーフハーバー」を規定している。金融機関間の送金システムを介して現金決済が行われる株式売買に係る対価の支払いに対し、546条(e)項が適用されるかにつき、連邦最高裁判所は、Merit Management Group, LP v. FTI Consulting, Inc.において、従前の多くの連邦巡回控訴裁判所の判断と異なり、管財人が否認権行使を求める大元の取引(株式売買に係る対価の支払い)が546条(e)項に該当しない場合は、当該取引は同項のセーフハーバーにより保護されない旨判示した。
渡部香菜子 (アンダーソン・毛利・友常法律事務所)

16:15−17:00
Minn. Voters All. v. Mansky, 138 S. Ct. 1876 (2018)
投票人が投票日に投票所内において、政治的なバッジ、政治的なボタンまたはその他の政治的なしるしを身につけることを禁止したミネソタ州法が言論の自由を保障する合衆国憲法修正1条に違反しないかが争われた事例。合衆国最高裁は、投票所を非パブリック・フォーラムと位置づけ、州は投票者が重要な選択に集中するために投票所内において一定の服装を禁止することができるとしたが、その線引きは合理的なものでなければならないとし、州法の「政治的」との文言および州が主張する解釈は州法を執行する選挙判事の裁量を統制する客観的で実行可能な基準に欠けており、州法は修正1条に違反すると判示した。
青野 篤(大分大学)