2014年7月22日英米法試験解説

I. 2種類の答弁取引。第1はありふれた事件を大量に処理するメカニズム。検察官としては有罪という形を確保し,弁護士としてはトライアルで重い刑を科されるリスクを回避。検察官や裁判官としては負担の大きい陪審トライアルでの証拠調べを省略し,裁判官が量刑のみを判断するだけですませられる。裁判官は取引に拘束されないが,不当でなければ拒否する必要もない。第2は共犯者の証言を得るメカニズム。この場合は陪審トライアルを回避するのではなく,そこでの証言を確保するため。共犯者にも自己負罪拒否特権privilege against self-incriminationがあるため,大陪審に喚問したとしてもそのままでは証言強制できない。黒幕や主犯格を有罪とするために共犯者の証言を得る必要があれば,検察官は共犯者が証言するための条件を提示。単に刑を軽くするだけでは証言できないということであれば,免責immunityやwitness protection programも取引材料。

II. デュー・プロセスの要請から州裁判所の領域管轄権には限界(International Shoe判決)。その第1段階のテストがminimum contacts。被告と法廷地との接点の問題。原告が創出した接点ではない(Worldwide Volkswagen判決)。Stream of commerceという考え方から被告の手を離れてからの接点もカウントされ得るが,それもmere awarenessでは足りず,purposeful availmentが必要(J.McIntyre判決) 。本件の場合,製造物責任の事例ではないのでわかりにくいが,被告はジョージア州で職務を遂行していて,捜査対象となった原告がネヴァダ州の住民であったということは被告側から意図したことでもないということであれば,被告がネヴァダ関連の事件を少なからず扱っていたというその他の事情でもない限りminimum contactsがあるとは認定し難いと思われる。

III. コモン・ローとエクイティとは,伝統的に異なる裁判所で発展した異なる判例法体系。イングランドでは1873年のSupreme Court of Judicature Actで単一のHigh Court of Justiceに統合され,コモン・ローはQueen"s Bench,エクイティはChanceryという部によって主として扱われることになり,手続も統合された。アメリカでは1848年のニュー・ヨーク州のField Codeから,コモン・ローとエクイティの手続が統合された。これ以降,立法などにより新しく認められた権利をコモン・ローかエクイティかで分類する必要性は乏しくなった。しかしこの融合によってコモン・ローとエクイティの区別がなくなったということではない。民事陪審が今でも原則的に用いられているアメリカでは,民事事件のうちコモン・ローと分類されるもののみに陪審審理の権利が与えられているのが通例である。実体法的にも,伝統的にエクイティ由来の権利や救済においては,補充性,裁量性,弾力柔軟性,裁判所侮辱という特徴が維持されているなど,コモン・ローとエクイティとの性格の違いは残されている。

IV. 第14修正5節は1節を実現するための立法権限を合衆国議会に与えたもので,1節の権利行使を容易にするための措置や権利侵害の予防を講ずることができる。しかしそもそも1節の権利侵害行為となるためには,state actionの要件により,州が何らかの後押しをしていることが必要としている。そのため5節の立法も,州が間接的にも関わっていない純粋に私人の行為を対象とすることはできない。これに対し州際通商条項はもともと私人を規制対象とする立法権限を合衆国議会に与えたものであって,とくにニュー・ディール期以降は,州際通商にsubstantial effect のある事項であれば広範に州際通商規制立法として認められることとなった。そのため動機としてはホテルやレストランでの人種差別を禁止する立法も,州際通商に実質的影響を与える事柄の規制ということで立法が可能となっている。