2003年9月20日(土),21日(日)

於 関西学院大学法学部(西宮上ケ原キャンパス)

判例研究会第1部会:E号館102号室
判例研究会第2部会:E号館104号室

シンポジウム:B号館103号室

 

第1日:9月20日(土) 判例研究会

1:30〜2:20

〔第1部会〕小向太郎((株)情報通信総合研究所)「ALS Scan Inc. v. Remarq Communities Inc., 239 F.3d 619 (4th Cir. 2001)ーーDMCAにおいてWebホスティング等のプロバイダーには,著作権侵害の通知を受けた場合に速やかに対応することが求められている。この通知は,完璧なものである必要はなく実質的に要件を満たしたものであればよい。」

2:30〜3:20

〔第1部会〕大塚正民(ジョーンズ・デイ・尚和法律事務所)「Alien Tort Claims Act (外国人不法行為責任追求訴訟法)をめぐる最近の動向ーーUNOCAL事件を中心として」

〔第2部会〕安部圭介(成蹊大学)「Gebin v. Mineta, 231 F.Supp.2d 971 (C.D. Cal. 2002)ーー空港保安検査官となりうる者を合衆国市民に限定する連邦法の合憲性は厳格審査基準によって判断される。」
同時多発テロ後のアメリカでは,「安全確保のため」と称してさまざまな立法がなされてきたが,その中には人権保障の点から問題視されているものも少なくない。空港保安検査員は合衆国の市民権を有するものでなければならないとする連邦法の合憲性が争われた本件において,連邦地裁は,政治部門への謙譲の議論はここでは妥当せず,外国人を排除するこのような立法の合憲性は厳格審査基準によって判断されるとした。本報告は,外国人に対する差別的取扱いの問題に焦点を当てつつ,平等保護に関する憲法上の要請と移民関連分野での連邦政府の広範な権限との関係を検討し,同時多発テロ後のアメリカの人権状況について考察を加えるものである。

3:30〜4:20

〔第1部会〕籾岡宏成(東洋大学)「Dardinger v. Anthem Blue Cross & Blue Shield, 98 Ohio St.3d 77, 2002 Ohio 7113, 781 N.E.2d 121, 2002 Ohio LEXIS 3081 (2002)――オハイオ州最高裁が,被告保険会社に4900万ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じた事実審判決について,これを3000万ドルに減額し,そのうち2000万ドルから訴訟費用等を控除した金額を,原告の亡妻の名を冠した癌研究関連団体等に対して支払うことを命じた事例」

〔第2部会〕若狭愛子(関西大学大学院)「Robinson v. City of Detroit, 613 N.W.2d 307 (Mich. 2000)ーー警察は,無罪の同乗者に対しては注意義務を負うが,不法行為者である同乗者に対しては義務を負わない。政府免責法の除外規定は限定解釈され,警察官が被害の主原因である場合にのみ適用される。」

 

第2日:9月21日(日)

10:00〜5:00 シンポジウム「変革期における日米コーポレート・ガバナンスの展開」

司会:宍戸善一(成蹊大学)

アンソニー・ザルーム(Anthony Zaloom)(森・濱田松本法律事務所)
「"What are these people thinking?!": Comparative Corporate Governance from the Legal Adviser's Perspective)」
A practicing lawyer's attempt to identify the ways in which both the ideology of Japanese capitalism and also basic Japanese attitudes toward working in groups shape corporate governance in Japanese companies.

ロナルド・ギルソン(Ronald Gilson)(スタンフォード・ロー・スクール/コロンビア・ロー・スクール)
「Catalyzing Corporate Governance: The Evolution of the U.S. System in the 1980s」
The paper traces the process by which the effectiveness of the U.S. corporate governance system was supercharged during the 1980s and, in particular, highlights the mechanisms of change. A number of points are stressed. First, the effectiveness of the formal components of the U.S. corporate governance hierarchy depends critically on conditions in linked external environments like the product market and capital market, and institutional characteristics like the distribution of shareholders. The paper stresses that changes in these linked environments operated to catalyze changes in the existing formal governance institutions. Second, the paper stresses that a particular feature of the U.S. system was necessary for this reaction to occur. In particular, the central feature
of U.S. governance is its mutability -- the system's openness to the effects of changes in relates environments that allow it to adapt to new circumstances. Finally, the paper argues that the "nested hierarchy" of the U.S. system allows a matching of corporate failure and governance response. Different levels of the corporate governance system respond most effectively to different kinds of failure. Thus, no single governance technique is effective across all circumstances; the entire hierarchy must operate.

大杉謙一(東京都立大学)
「社外取締役(独立取締役)」
英米の上場会社その他の大企業では、会社の指揮・命令系統に属しない者(主として他社の経営者や、弁護士・投資銀行家・学者など)を社外取締役としてボード(取締役会)に招く実務が定着しており、アメリカにおいてはエンロン事件を受けて、2002年のサーベインズ・オクスリー法により上場会社に厳格な社外取締役の採用が強制されることとなった。本報告では、英と米の違いにも留意しながら、社外取締役の歴史・現状と、その経済的機能・文化的意義・法的示唆を、日本人の視点から検討したい。

黒沼悦郎(神戸大学)
「サーベンス・オックスリー法制定後の資本市場法制――ディスクロージャー規制の強化とその影響に関する日米比較」
エンロン、ワールドコムの破綻を受けて制定された米国のサーベンス・オックスリー法は、コーポレート・ガバナンスに関する、連邦証券規制導入以来の包括的な連邦法であると評されている。同法は、また、ディスクロージャー規制を強化し、監査人の独立性を確保するための諸規制を設けた。わが国においても、サーベンス・オックスリー法の制定過程を参照しつつ、コーポレート・ガバナンスおよびディスクロージャーの強化を図る商法・証券取引法の改正が行われた。本報告では、日米における改革のうち、ディスクロージャーの強化に焦点を当てる。具体的には、CEO等による財務書類の真実性の宣誓、MD&A開示の強化、リアルタイム開示、監査法人の独立性の確保等を取り上げ、ディスクロージャーの強化が効率的な企業経営に好ましい結果もらたすものなのかを検討する。

川北英隆(中央大学専門職大学院国際会計研究科)
「誰が株式インデックス運用における議決権行使コストを負担するのか」
年金資金の株式投資に関して、議決権行使を積極的に行うべきだとの意見が強まっている。年金資金が議決権を行使するためにはコストがかかる。他方、年金資金の株式投資のスタイルとして、投資コストを削減するためにインデックス運用の比率が上昇してきている。では、年金資金の議決権行使とインデックス運用は矛盾しないのか。矛盾しないとして、コストは誰が負担するのか。開示制度は必要十分な状態なのか。日本においては、これらに関する議論が不十分である。